夜叉ヶ池 AT 新国立劇場

夜叉ヶ池  AT 新国立劇場
公式サイトはここ
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/20000615_opera.html
まずはスルーした公演でしたが
鏡花ということで
オペラの舞台上どんなふうになるのか?と思って
かなり後から購入したチケットです。
まあオール日本人キャストも、いつでも良いかと思わせていた理由でしたが。
総論からすると
舞台版「夜叉ヶ池」は出来上がっていたという感じです。
何が言いたいのかというと
これがオペラか?という感じが常にあったのと、
オペラって何?という疑問さえ起りました。
しかし演劇風としてみると
意外と演出も良く、役者も演技がしっかりとしておりました、って嫌みなのかな
あ、
と思うほどに演技で見せてくれました。
たまに歌が入る、そしてオリジナルの音楽が流れる演劇として観ていると
ミュージカル風演劇としての「夜叉ヶ池」という感じでした。
ここで言うオペラとは?
バロックから始まって、モーツァルトを経て、ロマン派で完成された
音楽と、物語がシンクロしている舞台という感じでしょうか。
その後、オペレッタなど娯楽性が強くなり、その延長に
ミュージカルがあり、
大衆娯楽の「映画」へとその流れは変貌していると私は思っているのです。
ここでこの意見に反論があるかもしれませんが、それはここでは置いておいてく
ださい。
その中で
この「夜叉ヶ池」は、音楽は、個人的には鏡花の世界観を表現はしていなかった
と思います。
しかし、それが悪いのかというとそうでもなく、
違った題材のオペラにとっておけばよかったかな、というのが第一印象です。
少しダイナミックな戦争などの内容に向いていた感じがする音楽です。
日本で言うと、信長とか。。。
そして鏡花の「夜叉ヶ池」の世界はもっと神秘性があって
それこそ、現代音楽のように短音、不協和音でも
十分表現が成立すると思います。
まずはこのことを明記しながら、感想を。
新国立劇場、気合が入っていると思うほどの
舞台装置で、
中劇場であそこまで動く舞台が入った演目を観るのは初めてでした。
それとともに
この劇場も十分に余裕を持って作られていると驚いたものです。
あと、ナブッコでもそうでしたし、ピーター・グライムズでもそうでしたが
合唱団踊らされるし、神輿(龍ですが)を担ぐし、大変だなあ、というのもまず
はじめに感じたことです。
彼らがうまいので演劇風に見ることができたのです。
またソリストも悪くはないのですが
アリアって子守唄くらいですかねえ、とにかく歌唱はとても良かったです。
しかし、オペラって、タイトルと同一視されるアリアの存在ってすごく大きいし、
浮かんでくるメロディー、旋律も重要です。そこが弱かったので、
映画音楽のようという表現を使いました。決して悪い音楽ではないのですが
「夜叉ヶ池」イコール、この音楽という感じで後世に残るほどではないし
「夜叉ヶ池」の世界からするとずれた世界観のある音楽かもしれませんでした。
あと演出が、それこそ作りこんでいて、その演出の効果もより、この舞台が演劇
ぽく見える理由の一つでした。
ですから、再演はされるのでしょうが
再演よりも世界初演という売りのある今回観に行った方が良いのではないでしょ
うか?
最後のシーン、マーラー並みのアダージョが延々と流れながら
終わっていく、という感じなら、評価が変わったでしょう。
とにかく前半1時間が1時間と思えず、
後半45分が45分と思えない時間の体感速度で、終わった時の疲労感は若干ありま
した。
こんな感じであまり、書いていないのですが、行間を読んでいただければ十分か
と。