映画 デビット・リンチ「アートライフ」
公式サイトはここ
http://www.uplink.co.jp/artlife/
私はデビットリンチと言うと映画監督だと思います。
そうですね「エレファントマン」「 ブルーベルベット」「 マルホランドドライブ」 などをすぐ思い浮かべます。
しかしこの映画では彼の芸術家としての側面がピックアップされています。
そして 自分語りで 、ドキュメンタリーとして 進行します。
しかしそれが実はすごく平凡なんですよ。 まあいくらでもこのような人生を歩んでいる芸術家もどきはいるだろうと、 思う程度のものなんです。
そして作品としての絵画などを見てもあまり私自身がインスパイアされない。
ですから彼の映画作品を知らない人が見るとすごく退屈でしょう。 しかし映画を知っているとすごくその映画のシーンが、このドキュメンタリーの行間として
頭に浮かび興味深いです。
そのくらい淡々とした流れの中で 静かに訴えかけてくるものがあるんです。
それを感じることができるかどうかがこの映画に対する評価となると思います。
この淡々とした流れ、また彼が移り住んだ街などを頭に浮かべながら色々なことを考えさせてくれる、そんなような流れです。
私個人的にはボブディランのコンサートを途中退場したという彼のコメントにすごく興味を覚えました 。
正論なんですよ。 例えば、現在流行っているドームツアーみたいに、もうアーティストと場を共有することはできないような
コンサートは既にコンサートではないのではないかと私も考えております。
これは一例としても、このように少しずつ彼と共鳴する部分が映画の進行の中で出てきてしまうのです。
そして素直に自らの素性を明らかにした彼の勇気に恐れ入るばかりです。
これは勇気がなければできないことなんだと思います。
そういう意味で彼は彼の人生にかなりの自信を持っているのだということがわかりました。
このことが分かったということ、あとは彼の映画の作品が私の心の中に残っているということだけで、
十分この映画は見た価値があると思いました。
この映画は
あくまで彼の映画のメイキングではないんです。彼の人生を形成するものを、すべてを、彼自身が自ら提示したということなんです。
そういう意味でデビットリンチという監督に興味がない人は全く面白くないと思う。
彼の作品が好きな人、ないし、芸術家としてどのように生きるべきか悩んでいる人が見るのに適した映画ではないかと思います。
全く自分を美化していないんです。
それがすごく大きなことで、 このことがこの映画の最大の魅力なんだと思います。
そしてこの映画の最後の方にかけてやっと「イレイザーヘッド」に関する言及が出てきます。
それは幸せな体験だったというような趣旨の内容であった。
そう映画監督に至るまでの流れがこの映画が最も言いたいことであったと私は思っている。
最も世間にデビットリンチという人間を分からせしめた、映画監督としての仕事、その最初の作品に至るまでの彼の人生の流れであるのである。