日本人バレエダンサーの感想と今後の展望

日本人バレエダンサーの感想と今後の展望
横浜バレエフェスティバルを
世界バレエフェスティバルの後に観て感じたことは
良い点と悪い点で分けられました。
まず
悪い点は
世界バレエフェスの感想の中でも書いたと思いますが
ペア間での男女関係の濃密さの欠如でしょうか。
たぶんこの表現が一番ぴったりと来ると思う。
なんというか日本人の女性は
少し性的に淡白な踊りのような気がします。
まあ、世界バレエフェスで「椿姫」「マノン」やらを連日見せられた後なんで
そう感じるのかもしれません。ですから「愛の表現」が弱い。
このことは「愛の成就」も、いわゆるストーリーを追って
めでたしめでたし、的な完結をしてくれる演目の踊りは良いのですが、
心の底からの愛の叫びというか、本能的な異性への欲求みたいなものは感じられないというところです。

もう一点。
徹底的にダメなのは
男性ダンサーの跳躍力。ないしは体とのバランスにおいて
飛んでいるように見せることができていないということ。
直近、この辺の突出力で人気があったのがワシーリエフ。あれだけ突出していれば
観ていて目が覚めます。そこまで行かなくても
こじんまりしている感は免れない。
ですから以前から、いろいろなフェーズで書いていると思いますが
日本人男性ダンサーは「ダンス」が良い。今ダンスの世界は日本人かなり上です。
前も言いましたが、ルーズなパンツの履き方で短足や体型の悪さも隠れます。
まさに身体ラインを出したときの、押しの強さがない。ひいては「フェロモン」がない。
女性のダンサーにはこれをあまり感じない。
たぶん、日本人のライトな感覚がわたし好みだからでしょうかね。

反して
良かった点。
何回も書いていると思いますが
まずは軸がしっかりとしていること。地面と点でつながっている基本ができていること。
さらには
表現に緩やかな間合いがあること。この辺は圧倒的に
出来上がっている。あと丁寧な踊り。そのため、すごく良く踊りがわかる。これってごまかしがないということでもある。
だから、よちよちしているようで
踊りを見た後は逆にすっきりとわかりやすい。ですから、正しい踊りなんでしょう。
さらには
舞台芸術が伝統的にさかんなので(能楽文楽、歌舞伎、日本舞踊など)コンテンポラリーにおける
舞台空間の作り方がうまい。これはもう突出しているのではないでしょうか。

以上
言い方によると
「優等生」バレエ、という人がいるかもしれない。
また
バレエは西洋のもの、という人もいる。
ただ
踊りということに関しては日本は古来から儀式での踊りは存在している。これを隠喩的に表現したのが
「横浜バレエフェスティバル」の和太鼓演奏。
まさに全国各地で踊りの祭りが行われている。
祭りは自然崇拝の中で踊りを維持発展させ、祭りの踊りで豊作祈願をしてきた民族であることは事実でしょう。
その中で
自然の動きを超越するバレエがシャーマン的に発展してもおかしくはなかったのかもしれません。
ですから
日本のバレエには西洋と東洋の融合の可能性を感じます。これは私の個人的な意見。
この点で
バレエの古典には「優等生」バレエを
コンテンポラリーには日本の伝統から来る視点を、と思います。
これから日本のバレエは新しいフェーズを迎えるのです。