14回世界バレエフェス、総論

14回世界バレエフェス、総論
今回の「世界バレエフェス」は
ダンサー歴が長い人が多いという印象がありますが
ではベテランばかりかというと。そういう言葉でひとくくりにする人は舞台を観ていな
い人だなあと思います。

ダンサーって自分の生きざまをも
踊りで表現するのだと思います。それが加わるから、
その人の踊りを見るということが楽しみになるのです。
また、長年のダンサーとしての勘から
「どう踊れば良いのか」がわかっている。
そして肉体的衰えの中でも
それに迎合する簡単な踊りにするのではなく
最後まで自分の肉体と対峙して自分を高めることを怠らない。
このことが感動を呼ぶのだと思います。
今回
ゲランやオーレリ、ロホ達にそれを感じました。

男性はベテランにほとんどがなったなあと思っても
誰がドン・キホーテやっても素晴らしいだろうと思うメンバーが集まっている。
ゴメス、ラドメイカー、レンドルフ、マックレー、エイマン、リアブコ
ラントラートフ、などそうそうたるメンバーだと思います。
それに若手?(アルビッソンやムンタギロフも加わりバランスの良いメンバー構成だったのではないでしょうか。

パリオペラ座のアルビッソンと言うダンサーは可憐だったなあ。ガニオと良いペアでした。

そういえばパリオペラ座ファンは今回たまらないメンバー構成でしたよ。
ゲラン、ルグリ、オレリー・デュポン、モロー、ガニオ、エイマン、アルビッソン
これはパリの人たちもうらやむ構成でしょう。

また、今回のフェスのメンバーに目を戻すと
いったんバレエを辞めた人、
他のバレエ団の監督になった人
バレエ団を移った人、
今年引退をした人、など彼らを囲む環境も日々変化しておりますが
その中でぶれない踊りに対するひたむきさを感じることが出来るって素晴らしい
ことですよ。それが今回のフェスです。

さらに
振り付け師の個性も楽しめました。
やはりベジャールは「人生を謳歌」する踊りが素晴らしい。ジョルジュ・ドンが
踊った
一連の踊りもそうですけど、そういう踊りが出来る人間、ダンサーとベジャール
は組んできたんだなあ
と思いました。
マーラー交響曲をバックに「生命の神秘」から「誕生」そしてその背景にある
「愛」もIPOと表現してくれましたし(「奇跡の競演」)、「第九交響曲」においても
人類創造から人類の愛への壮大なテーマがあったと記憶しております。これも
IPOがメータ指揮で演奏してくれましたね。やはり彼は陽気ですよ。そしてポジティブシンキングですね。
なにかそれ
が「ギリシャの踊り」からも伝わってきた。一貫したテーマを感じさせるという
のも巨匠たるゆえんでしょう。

ノイマイヤーは、その点暗い。しかし、「愛」がテーマの振り付けが多いから仕方ない。それも男女が面と向かいます
ね。その中で生まれる葛藤なども人間の永遠のテーマなので人間の本質の一つをえぐっている。ある意味日常に誰しも体験するから
わかりやすい。

クランコは作品とすると全体ではわかるのですが
個別には振付の意味がわかりにくい人です。私個人の意見ですけどね。
しかし全体として作品を作り上げる力は素晴らしい。
そのほかの振り付けも
一風景のようで、そこには人間が出てくる。
ダンサーは人間なので
どうも人間を表現するのです。
たまに音譜になったり
神になったり、妖精になったりする場合もあるのですが、基本は
私たち人間の代弁者なのです。
ですから表現者たるダンサーは個性的である必要がある。他のダンサーではない、
個性が必要になる。
これを痛切に感じたのが今回の「世界バレエフェス」です。当然
人種的にも多岐にわたりました。
グネーオの肉体美には参りましたね、あの筋肉の付き方にはため息しか出ない。

最後に。みんな老けたなあ、と思うけどその分自分も老けているんです。
次回が怖い感じがしますが
期待しながらも、今回の良さを噛みしめながら、この感動を思い出す機会は
これからあるんでしょうね。
良いバレエフェスでした。

課題はテープの多用でしょうか。