椿姫 AT 新国立劇場

椿姫 AT 新国立劇場
特設サイトはここ
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/performance/150510_003710.html

改めて観てみると
今回の公演は、日本国内での「椿姫」の公演のトップレベルだと
気づかされます。
それと
ヴィオレッタ役のボブロの独壇場という感じもします。
これはオーケストラの音に彼女の声がちょうど合っていることも一つの要因だと思うのです。
しかし、あそこまで
しっかりと声を出されると
もう勝手にやってくださいという気さえしました。
さらには
アルフレードは確かに声は少し弱いままでした。
しかし声の質はアルフレードにあっているし、演技はよかった。ヴィオレッタに対する愛情表現なんか最高でした。
そう、愛の物語、として完結するという舞台を
この辺の細かい演技まで作りこんでいるなあという目で見ると
最高の「椿姫」です。
いわゆる、舞台の物語、演技としても完成されているのです。
パパジェルモンも、第2幕1場において、演技が要求される場で
歌唱で歌いきりました。
ここの第2幕1場というのは、前回わからなかったですが、傘は、ピアノの上の方に吊らされているのですが
ピアノが「ヴィオレッタの感情」として、オペラを通じての表現とすると
その感情が飛ばされる様を表しているのではないかと思いました。
そういえば
もうひとつ前回気が付かなかったことは
地面も
下手奥の鏡と同様に鏡張りで
シャンデリアはそこにも投影されるのです。ですから第1幕は
シャンデリアは実際の存在とともに
下手奥の壁面鏡にも投影され、地面の鏡にも投影されるのです。
第2幕2場などはシャンデリア2つですから
もう2つずつ下手奥と、床に投影されて、すごくきれいです。その中で
合唱隊は女性と男性に分かれて、社交界、ないしはジプシーとしてキラメやかに
舞台上を飾るのです。
この下手と床のシャンデリアの投影は、その効果として
舞台に奥行を出すだけではなく、感情のさまざまな一面を示しているのではないかなあ、と思います。
あと第1幕に関しては
社交界の雰囲気すごく出て華やかな印象をみんなで出しておりました。
さらにはあのシャンパンタワー、実際になくなっているということは
みんなでうまく取っていたということなんでしょう。
この辺も含めて演技をかなり要求する舞台ではないかと思います。それをこなしたからこそこれだけ立派な舞台になったと思う。
さらに
前回気がつかなかったことは
始まる前のカーテンがドレスの端になっていて、そこで葬儀の様子が列記されていること、さらに
遺影らしき写真が写されているということ。
またそれと対になっているかのごとく
第3幕の最後、下手からヴィオレッタに(ピアノ)にかけてかけられている
カーテン状のものにもおなじ遺影となる写真が映されているということです。
ですから
第3幕の最後は、舞台のカーテンが閉まる前に
ちょうど円状の縁で縁どられた写真(ないしは絵画の額)の中での出来事みたいな感じです。そう思い出の昔ばなしのような。
その額の中にはピアノとその前に
ヴィオレッタ、ピアノにかけてヴィオレッタの写真が写しだされるという感じです。
まさにグランドフィナーレ。
それに輪をかけて、
ソプラノと役柄のヴィオレッタが舞台上カーテンの外で重なる瞬間、観客は拍手を誰にしたのでしょう?
ヴィオレッタの愛」にでしょうか?ソプラノの出来具合にでしょうか?
それは個人の見ているときの愛の状況に依存すると思います。そう、答えは観客に投げかけられている。
だから、素晴らしい演出なんですよ。これに前回気が付かなった点は反省です。

しかし、前回気が付かなかった点が多すぎる。ぜひ、この舞台は2度上手側と下手側から見てください。そして座席の高さも変えてください。少なくても1度は
2階以上の席から見ることをお勧めいたします。
見える景色が違いすぎますよ。
前回全く気が付かなかったシーンも数多くあったので
すべてを楽しむためにはこのような見方がどうしても必要なのです。
上で書いただけでも
シャンデリアの投影が床にもあったということ。
第3幕での遺影の投影がなされていたということは全く前回気が付かなった。
ですから感想もずいぶん違ったものになっていると思います。

あと第2幕の2部での仮面舞踏会のシーン、ここも前回気が付かなったけど、合唱隊のドレス
のシルエットきれいなんですよね。歩き方がちょっと不慣れな感じがしましたが。

さらにヴィオレッタの衣装も「黒」に変わるのですね。この辺の衣装の色付けも気が付かなった
第2幕1場では「茶色」でしたが、私のヴィオレッタの衣装のイメージは第1幕で決定づけられてしまった。
「黒」のイメージは「死」なんでしょう。
最後舞台のカーテンの外に脱ぎ捨ててあったのは赤い衣装。愛の終わり。
イヴ・アベルの指揮、オーケストラの演奏にも言及しないと怒られそう。良い出来でした。