ヴォツェック  AT 新国立劇場

ヴォツェック  AT 新国立劇場
公式サイトはここ
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/performance/140405_001608.html
劇場でいただいたキャスト表の裏に
「小さき者たちの、救いようがない、貧しく哀れな物語である」と書いてあるの
ですが
このような内容がテーマになるということは時代背景があるのかもしれません。
それはオペラの客層が一般市民にまで広がったという時代背景です。
貴族が対象のオペラならば、この、上記で示したようなモチーフは
歴史上のドラマに置き換えて
作られると思います。
そして一般市民にひらかれたオペラは、とうとう「貧困」をもテーマに持ってき
たわけです。
まさに切実なテーマです。これは作られた時代が
満足な時代なら、確実に作られなかったものでしょう。
時代の欲求が作曲を後押ししたものだと思います。
「貧困」に加えて「浮気」も絡んできます。
いや「貧困」ゆえに「浮気」されるので
確実に負け組の話なのです。
この「負け組」を示すプロットがいたるところに出てきて
それが連なり3幕構成に積み上がってくるのです。
各場面 突拍子もないようで
実はすごく意味のある組み合わせだと思いました。
各幕の中にも場面はかなり細分化されて、だいたい5部くらいで構成されている
のです。
このなかで主人公がいかに病んでいるのか?どのような病んでいったのか?が
2幕では直接的に、あとは意外と間接的に表現されます。
この組み合わせは3幕において
実にすごいなあ、と思わせるものがありまして、あとからやけに感心する次第で
す。また、ベルクの音楽もすごい不安定な時と、意外と力強いときがあり
このテーマの音楽には合っているのです。いや、自分で作れると
確信的だからこそ、こんなモチーフを選んだんでしょうけどね。
ですから
はじめのころ、場面の羅列がされていて、特に1幕は睡魔が襲ってきたこと数回ありました。しかし後から思うとその意味がわ
かるんですよ。すごいことです。
また
演出も心の闇を垣間見せてくれるようなすごく不安定で、下には水が敷かれてい
て、
その水は、地下水であるというかの如く。地下水の上ということで
の、深層心理を描くというアプローチなのかなと思いました。
または水の揺らぎが心の揺れを示すということでしょう。この演出と呼応して
大道具、セットとしての舞台が不安定に揺れる。これはすごいことだと思いまし
た。だから常に不安定。落ちるところまで落ちた水の上の深層心理の世界、役者
なのか(合唱隊ですべて賄ってはいないと思う)かなり大変な数の
黒子がおりました。
さらには
オケとは別に舞台上も楽団が配されるのですが
バイオリンなどは不協和和音平気で
あとギターやアコーディオンが配置されるのですごく違和感があります。
このシーン自体が違和感があるので、まあ適切な内容表現ともいえると思います
が、、、。
さらには最後の方で聞こえる
少年合唱隊の清らかな声。しかし内容は、子供の残虐さをも示しているというき
ついもので、最後まで救いなしですね。
でも
これが現実の、新国立劇場のオペラハウスで上演されたという事実は
感心しました。前回の「死の都」と今回と
かなり冒険しているなあと思う次第です。そういえば
リゴレット」「ナブッコ」「イル・トロヴァトーレ」なども変な演出でしたし、、、。
すごいギャンブルをしているなあと思う次第です。
さてと私が事前に買ったオペラのチケットは、ここまでで
あとはバレエの公演です。
来年のラインアップで狙ってみたいのはいくつかありますが
直前に時間と体力があえば、という感じののんびりと楽しむモードに転換します。
新国立劇場で見る予定の最後のオペラが
この作品とは皮肉です。又機会があったらたまに出かけようと思います。
少なくても二期会のここでの公演は買っているし、、、、汗。